本レビュー: 和田純夫 今度こそわかる 重力理論 <一般相対論の入門書と見せかけてかなり先端的なことまで概観させてくれるワクワクの書>
和田純夫 「今度こそわかる 重力理論」(講談社 2018)
一般相対論の入門書と見せかけてかなり先端的なことまで概観させてくれるワクワクの書 一般相対論の構造を現在的な視点からはどう評価するか?
・重力のテンソル理論(非幾何学的発想)
https://www.amazon.co.jp/dp/4000059424
・正準形式
・一様等方宇宙論・一様等方量子宇宙論
・量子論と実効理論
・スカラー・テンソル理論/修正重力理論
・有質量重力理論(2010年頃の状況とその後の進展)
◆「字が小さすぎて読めない!」原因は白内障だった件(当社比)◆
10年くらい苦しんだ文庫本の小さな字が読めない現象の原因は老眼ではなく、「白内障」であった。
自らの身を挺した人体実験(白内障手術)まで遂行しないと、自分の目の仕組みを理解できなかった。
・「老眼」とは、眼のレンズの焦点調節機能が働かなる症状である。
というのは、老眼になった10数年前にググって、初めて知った。それまで遠視の一種かくらいに思ってた。
理屈的には一応わかったが、自分の見え方対応させての実践的な把握とはいかなかったようだ。
・小さい字が読みにくいというのは、眼の解像度が下がっていること。
のハズだよなあ・・・とは思ってたが、老眼との関係はわかってなかった。
老眼鏡をかけて焦点が合ってるのに見にくいというのは、自分の眼の解像度が下がってる以外ない。
老眼ってのは、解像度もさがるものなのか?と訝しんでいた。
・ハズキルーペは、拡大してくれるので見やすくなる。感動モノであった。
かなり前にメガネ屋の店頭で見かけて、こんな発想が有ったのかと即買った。
遠くがきちんと見える状態でハズキルーペをかけるので、近眼者はメガネを2重にかけることになるのが辛い。
老眼鏡とハズキルーペ一体のメガネを作ってくれれば良いのだが、そういう製品は無いようだ。なにしろ老眼鏡をかける時は文字を読む時なので、拡大がデフォルトでも困らないというかウェルカムなのだ。
・白内障は、視力検査ではあまり顕著に出てこないようだ。
2年前にテレビを(ブラウン管テレビから!)43インチ液晶テレビに買い替えて良く見えるようになったと感動したのに、その1年後には字が読みにくくなっていた。今から思えば、単に白内障が進んだだけの話だが、当時はサッパリわからなかった。手術の半年前くらいから、遠くの信号が2重、3重に見えることに気づいた。これが白内障がひどくなった症状らしい。この状態になって初めて視力検査の結果が悪くなって、次の免許更新が無理な状態で取るなら手術が必要と言われた。(この話とは関係ない緑内障のため、2ヶ月に1度は検査を受けているが、それまでは視力に変化が無かった。)
・白内障手術の結果、文庫本の文字がクリアに見えるようになった。
ということは、小さい文字が読みにくいというのは老眼とは全く関係無かったということ。なにしろ手術で水晶体を固定焦点のプラスチックレンズに変えて「完璧な老眼」になった状態で小さい字が読めるのだから。
私の場合、緑内障が有り、こちらは見にくいどころの話ではなく、眼圧を下げ続けなければ失明まで進む病気なので、白内障はできるだけ後回しにされていた。こんな事情が無ければ、さっさと手術をしてしまった方が得策だと、今は言える。 もっとも、いつ手術するのか? 必要性の判断と、(失敗率が非常に低いとはいえ)決断は難しいが。判断する本人にとっては初めての経験で判断材料が乏しいので。
ただ、私の場合は、手術の2、3ヶ月前には、自動車などが近くに来るまで気付かないという、視認性が極端に低下して命の危険すら覚えた事故スレスレまであり決断は用意だった。
ハズキルーペを使った時も感動したが、術後に小さい字がクッキリ見えたのは10倍以上感動した。まあ、ハズキルーペの価格と手術代も10倍程度なので、コスパとしては同程度か?
他の人の経験を知るという意味では、小林よしのりの「目の玉日記」はイイ。
白内障の気もない頃に面白く読んだ漫画だが、手術を考えた時にひっぱり出してきて、真剣に読み返した。いろいろな点で参考になった。ググってもこういう知識はなかなか見つからない。
ただ、症状は自分の場合とだいぶ違うので、やはり個人差は大きいのだろう。
手術を考えている人に、ひとつだけアドバイス。 手術は真夏を避けた方が良い。なにしろ、顔を洗えない、頭を洗えないとかの制約がつくので夏はキツイ。 私の場合、都合により盆休みになっていしまった。さいわい手術の翌日から少し猛暑が和らいだのが救いだった。
◆ブラックホールを正しく理解する◆
Myブログ始動なり。
とりあえず、興味の赴くままに書いてみる。
今の興味: ブラックホール、インフレーションvsサイクリック宇宙モデル、エントロピー、ヒッグス場、VR/AR、機械学習、意識、初期仏教 など。
今回は、ここ数年で一番良かった本で、前からレビュー書こうと思いつつ放置してたコレ!
キップ・ソーン 「ブラックホールと時空の歪み アインシュタインのとんでもない遺産」
評価: ★★★★★ for しっかり考え方を理解したい人・時間のある人
評価: ★★☆☆☆ for 浅くて良いからてっとり早く結論だけ知りたい人・時間のない人
キップ・ソーンは、相対論が専門の理論物理学者で、LIGOでの重力波直接観測でノーベル賞受賞者の1人。
この本をひとことで表すと、
数式なしでブラックホールを「正しく」把握できる凄い本、ただし「お手軽に」ではない。
私はこの本によって、最近の進展についての情報を正しく把握でき、持て余していたペンローズの本なども取りかかれるようになった。
この本の魅力:
・本質
「ブラックホール」がどんなものなのか、お話しレベルの説明でお茶を濁すのではなく、物理的なイメージを正しく得られたと確信できるような内容となっている。
・納得
1994年までの、歴史的な紆余曲折をソーン自身の実体験も含めてスリリングな描写で魅せる。科学者たちの知的格闘の記録でもある。当時の第一級の物理学者たちでもブラックホールという概念をスンナリとは受け入れられなかったという状況が実感できる。
ホーキング放射が1974年、重力波検出のLIGOプロジェクトが1984年、ホーキングが白鳥座X-1がブラックホールであると(賭けの負けを)認めたのが1990年、ホーキングの時間順序保護仮説が1991年なので、重要なイベントはカバーされており、この本で本質を理解していればその後の展開を理解するのは容易。
・描像
読みやすく、わかりやすい記述。しかも話が面白い。物理的なイメージを与えることを重視(描像という言葉で表現)している。数式なしで文章と図で正確なイメージを伝える記述は凄いのひとこと。
あと、魅力なのか微妙だが、本が立派で、ハリーポッターの単行本ような感じの装丁。持ち歩いて読むのには不便。Kindle版が欲しいところだが、日本語版は無い。
・発展性
わかりやすい本文だけでなく、注釈、用語集、年表、文献リストが整備されている。特に文献リストには、キーとなる論文が載っており、この本をロードマップとして原典に当たっていくことができるようになっている。最近はネットで入手できる論文も多く、ディープに楽しめる。こういう本を出版できることに、アメリカの底力を感じる。
・ソーンの経験
彼がリアルタイムに経験したことや、直に話をしたりしたことを生々しい筆致で伝えてくれる。特に重力波(LIGOプロジェクトの起動)、ワームホールを使ったタイムマシンのエピソードは本書の白眉。2015年に初めて重力波の直接観察がLIGOで達成されたが、本書には2007年ごろを想定した重力波観測の予測シーンが描かれており実際の観測シーンと比べてみると面白い。
タイムマシンの研究は、物理学者が真面目に考察したタイムマシンということで世間的にも物議をかもした事件となり、ホーキングが時間順序保護仮説を出し、またホーキングとの賭けをしている。
最近気付いたのだが本書の原題は、
BLACK HOLES & TIME WARPS Einstein‘s Outrageous Legacy
であり、邦題は「時空の歪み」となっているが、原題は「TIME WARPS 」である。
・物理研究の進め方
特に、ホイーラー、ゼリドヴィッチ、サイアマの3指導者の流儀のちがいなど興味深い。
欧米と旧ソ連の研究体制の違いの解説は貴重。
物理の考え方をいろんな面から教えてくれる。
おまけ(本書の内容):
アインシュタイン、ミンコフスキー、
チャンドラセカールvsエディントン、
ツヴィッキー/ランダウ/オッペンハイマー/ホイーラー/ゼリドヴィッチ/サイアマ、
電波銀河/クェーサー/巨大ブラックホール、
LIGO(重力波観測プロジェクト)、
メンブレン・パラダイム、
ブラックホールのエントロピーとブラックホールの蒸発(ホーキング放射)、
ペンローズの特異点定理、
ワームホール、エキゾチック物質、タイムマシン、時間順序保護仮説
この本読んで齧ってみたくなった論文:
・1939 オッペンハイマー-スナイダーの論文。爆縮する星が外部の時空から切り取られること、外から見たら地平で凍結したいるように見え、表面から見たらそうではないことを示した。
・1958 フィンケルシュタイン基準系の論文。オッペンハイマー-スナイダーのパラドックスを解決。
・1964 ペンローズの特異点定理の論文
・1974 ホーキング放射の論文